初めての子育てで直面した長男の病気!親である私の向き合い方や気持ちの変化は?
長男を妊娠中、何の根拠もなく健康な赤ちゃんが生まれてくると思っていた私。しかし初めての子育ては、なんと病院尽くしの日々でした。先天性の病気を持って生まれた長男の今までのこと、親である私の病気への向き合い方や気持ちの変化などを綴った体験談です。
産後の違和感、そして診断
私は26歳で長男を妊娠しました。当時の私は、「赤ちゃんは健康に生まれてくるもの」となぜか漠然と思っており、そのため初めての出産や育児に不安になることはあっても、生まれてくる子どもの健康に対しての不安は感じていませんでした。しかし、生まれてきた長男には「ある違和感」があったのです。それは、右上が少し突っ張ったような形の唇でした。よくよく見ないと気付かないものでしたが、見れば見るほど気になるように。
一ヶ月検診でそのことを先生に相談すると、大学病院へ紹介状を書いてくれました。そして大学病院の形成外科を受診したところ、長男は「口唇口蓋裂」という病気であると診断されたのです!
口唇口蓋裂は先天性の病気で、日本人では500人に1人という高い確率で生まれるそうです。胎児のときに顔を形成する段階で、唇、歯茎、口蓋がうまく癒合せず割れたまま生まれてくる先天異常の病気なのですが、程度はさまざま。長男は唇が少し引きつれている程度の比較的症状の軽いものでした。
通院!検査!手術!病院慣れしてしまった長男
口唇口蓋裂は、割れている箇所を閉じる手術が行われます。長男の場合は歪んだ唇と鼻を左右対称にするという手術を生後6ヶ月ですることに。しかし口唇口蓋裂は手術してはい終わりとはいかず、発音不良、中耳炎など口唇口蓋裂によって起こるとされるさまざまな合併症や影響に関する治療も必要であることが多い病気です。
我が家の長男も長い通院や検査を経て、口唇口蓋裂児に多い「滲出性中耳炎」であることが判明しました。そこに至るまで、何時間にも及ぶ脳波の検査や、小さい身体をCTスキャンにかけるなどさまざまな検査をし、平行して口唇口蓋裂の手術、喋るようになると発音不良のため言語訓練を受けるなど、病院に行くことが日常でした。
さらに数度に渡る転勤によって病院も何度も転院していたので、いつしか私も長男も病院という空間に馴染んでしまうように。新しい病院、新しい先生でも嫌がることなく、大人しく診てもらう長男を前に、親として助かる反面慣れすぎてしまってなんだかなぁ…と複雑な気持ちになったものでした(笑)
変わっていった私の価値観
口唇口蓋裂と診断され、中耳炎のため耳が聞こえていないかもと告げられた当初は「どうしてうちの子が」と悲観したり、「私のせいで病気を抱えて生まれてきてしまったのでは」と自分を責めたりすることが多く、涙を流すこともありました。
しかし子育てをしていく中で、「この子のために今できることは何か」を考えるようになっていきました。悲観していても何も始まらないし、この子のためになるわけじゃないと気付いたのです。
さらに転院先で口蓋にも異常があることが分かり、2度目の手術になったときのこと。手術をした病院は県外からも多くの患者が訪れる子ども専門の総合病院でした。10日間の入院で出会ったのは、普段生活している中では出会わないような病気の子どもたちばかり。でもどの子のお母さんも、みんな明るかったのです。きっとそこに行き着くまでに葛藤や悲しみや、いろんな思いがあったはずですが、それを乗り越えた「強さ」を感じました。母は強しと言いますが、その言葉を噛み締めた10日間でした。そして、改めて悲観することよりも前向きでいることが子どものためであると思ったのです。
長男を出産するまでは健康というものを当たり前に感じていた私は、長男の病気によって健康であることは当たり前ではないと気付かされ、そして健康ということにありがたみを感じるようになりました。
診断から8年経った現在
診断から8年。現在は広島で暮らしている我が家ですが、長男は現在も歯科の問題や中耳炎の治療、言語のアフターフォローや術後の経過観察など通院が欠かせません。
転勤続きで、今までに通った病院は両手で数えきれないほどになりました。この先不安な部分はまだまだありますが、今現在長男が元気に楽しく毎日を過ごせていることがなによりも一番大事なことだと感じています。
病気の子どもを持つ親として
子どもが病気になって不安にならない親はいないと思います。最初から病気に対して前向きに考えられる親も多くないはずです。私のように「なんでうちの子が」と悲観することもあるでしょう。ときには健常の子と比べてしまうこともあるかもしれません。
しかし子どもの母親は自分だけなのです。母親である自分が子どもの病気を認めて、病気である子どものことも認めれば、子ども自身も病気を受け入れ、向き合うことができるのではないかと思います。
そして「今できる限りのことをする」ことが、病気の子どもを持つ親としての務めだとも思います。
最後にひとつ。我が子は度重なる転勤による転院のたび、新たな症状が発見されることや、違った角度からの治療のアプローチによって症状が改善されたということが多くあり、病院や先生によって見方も違うということを実感してきました。我が家は転院という形でしたが、万が一病気が発見された場合は、セカンドオピニオンの検討をおすすめします!
たくさんのことに気付かせてくれた長男の病気
自分が至って健康だったために、当たり前に感じていた健康というもの。そのほかにも、長男の病気によって気付かされたことはたくさんあります。言い方はおかしいですが、子育ての中で健康に感謝し、小さなことにも幸せを感じることができるのは、長男の病気のおかげだと言えます。
全ての問題を一度に解決することはできませんが、今までそうしてきたようにこれからも目の前の問題をひとつひとつ解決していきたいです。そしていつか長男と「あの頃は大変だったね」と言える日がくることを願っています!
担当ライター