A little love story~ちいさな恋の物語~
小さいお子さんを持つママさんたち。「まだまだうちの子は、恋とか愛とかわかっていないわ」なんて思っていませんか?実は、みなさんが思うよりもうんと早く、初恋の足音は子どもたちに聞こえているのです。
会えたら嬉しいのが恋?
ある日、娘が何とも言えない難しい顔をして幼稚園から帰ってきました。いつになく神妙でシリアスに何かを考え込んでいる様子が何とも滑稽で、笑いをこらえながら尋ねてみました。
「難しい顔して、何かあったの?」
「あのね、私、恋してるかもしれないの」
思わぬ娘の回答にびっくり!思わず
「なんで?」と質問してしまいました。
娘は語り出します。
「Aちゃんは、Hくんのことが好きなんだって。だから将来結婚するんだって。私もね、Sくんと結婚したいなって思うの。だから私Sくんに恋してるかもしれないの」
最近の幼稚園児はませてるなぁ、と感心するやらあきれるやら。そこで私は続いてこんなことを聞いてみました。
「じゃあ、恋って結婚したい、って思うことなの?」
娘はもっともらしく答えます。
初めての恋、そして終わり
衝撃の告白以降、娘の話の中にSくんの登場回数がずいぶんと多くなりました。
Sくんがお歌の時間にこんなことをした
お弁当の時間にSくんの横に座れた
Sくんは「こおり鬼」がとても得意。たぶん広島で一番得意だと思う
などなど。
確かに甘いマスクでサッカーを習っているスポーツ万能のSくんは、ちびまる子ちゃんで言うところの大野くん、杉山くんタイプ。
この子なら娘が将来結婚するのもやぶさかでないなぁ…
なんて母親もよこしまな考えを抱いていたのは事実です。
しかし、娘の甘い初恋はあっという間にピリオドを告げました。
ある日、娘は幼稚園バスから降りるなり
「私もう、Sくんのこと好きじゃなくなった」
と私に告げました。
「え~!!なんでよ~!!」
と思わず絶叫する私。
「だって、お友達のMちゃんもSくんのこと好きになったんだって~。だから今日、MちゃんとSくんに、『好きな子いる?』って聞きに行ったの。そしたらSくん『みんな』って言ったんだよ。みんなってことは、私のこともMちゃんのことも好きってことでしょ?だから私、もういいかなって思ったの」
なんともドライな…。私の中で勝手に、初恋と言えばどことなく切なくて、でも温かい、一生大切にしたいものだと思っていたので、ちょっぴり拍子抜けしてしまいました。こうして、娘の初恋騒動はあっけなく幕を下ろしたのです。
母として、女として思うこと
娘の初恋は終わったけれど、娘の周りでは相変わらず、「○○ちゃんは○○くんが好き」というゴシップネタは尽きませんでした。話を聞くと、「○○くんが好き」「○○くんがカッコイイ」なんて騒いでいるのは女の子だけで、男の子に好きな子を聞いてみると「恐竜!」「カブトムシ!」「ママ!」なんてとってもキュートな答えが返ってくるのだとか。
「男の子は恋ってわかってないんだよぉ」と憤慨する娘に
「なんでよ、それくらいの方が子どもらしくいいんだよ」と私。
「ところで、初恋を経験して、恋について理解できた?」
と聞いてみました。すると娘は少し考えて
と話してくれました。
確かにSくんの話をしている娘は、照れくさそうで嬉しそうで、いきいきと輝いていました。もしかすると、好きになる気持ちに早いも遅いもないのかもしれませんね。
「こんな小さいうちから恋だなんて、早すぎる!」と思ってしまうのは、まだまだ幼い子どもでいてほしい、という我々大人の願望の表れなのかも。
娘はこれから成長すると、はっきりと「恋に落ちる」ということを自覚するようになるでしょう。
そして、「好き」は決して嬉しいだけではなく、ときに胸を引き裂かれるような気持ちになったり、夜も眠れないくらいせつない気持ちになったりすることだ、ということも知るでしょう。
そして、いつしか母親である私に、その恋心を隠すようになることでしょう。
それを繰りかえして、大人の女性へと成長していくのでしょう。
できれば、悲しみの涙より、喜びの涙の方が多い、そんな恋をしてほしい。
そのときはつらくてつらくて仕方なくても、後で思い返せば思わず笑顔になってしまう、そんな恋をしてほしい。
これが、母親として、女としての私の願いです。
「私、たぶん結婚しないと思う。だって、ずっとカーカとトートといたいもん」
母親の心を知ってか知らずかこんなことを口走る娘。
「それはそれでちょっと困るんだけど…」
と思わず苦笑してしまう私なのでした。
恋する喜びは大人も子どもも一緒
時は経ち、今はすっかり、恋について話さなくなった娘。どうやら彼女の中で「恋愛ブーム」はいったん終了したようです。さて、次に彼女からコイバナが聞けるのはいつかな?今から楽しみな私です。
担当ライター