保育園・幼稚園の加配とは?内容や申請手順と広島市の取り組みを紹介
障害がある子供や発達について困りごとがある子供が安心して保育園や幼稚園で過ごすための支援に、「加配」という制度があります。今回は加配について、制度の内容や受けられる支援、加配申請の流れなどを紹介します。後半では加配を含む、広島市の取り組みについても触れていますのでぜひ参考にしてください。
保育園や幼稚園における加配とは?
まずは加配制度の基本を解説しましょう。
加配とは?読み方と基本
保育園や幼稚園における加配とは、読み方は「かはい」で、文字通り通常の職員数に加えて「加配保育士」を追加配置する制度です。障害や困りごとがある場合など、加配が必要な子供に先生が個別で配置され、園生活をサポートします。自治体が園に直接補助金を支払うことで加配制度を実施している場合が多く、保育園などで加配を利用する保護者の料金負担はありません。
なお、小学校の加配とは、対象児童の介助や学習のサポートのために配置される教育支援員などと呼ばれる人のことです。
どんな場合に加配をつけられる?
保育園や幼稚園で加配をつけるかどうかの判断は、自治体や園ごとに基準が異なる場合があります。例として「身体障害者手帳や療育手帳を保持している」「特別児童扶養手当の対象者である」「医師などによる診断を受けている」などがあげられますが、具体的な診断に至らないまでも発達の凹凸が見られる場合に対象になることも。
また保護者から加配制度の利用を希望するケースもありますが、園側から加配をすすめられることもあり、ショックを受ける保護者も少なくないようです。しかし、加配をすすめられたからといって、必ずしも発達障害であるとは言えませんし、加配制度を利用することで後ほど紹介するようなメリットもあります。子供が加配制度の対象になるかどうか、制度を利用したらどのような支援を受けられる可能性があるか、まずは園や自治体に相談してみることが大切です。
加配の配置基準と受けられる支援
ここからは加配制度について、配置基準や受けられる支援をより詳しく見ていきましょう。
加配の配置基準
子供の数に対して何人加配保育士を配置するかは、自治体などによって異なります。一定の基準を設けている自治体では、「対象の子供2人ないしは3人に対して保育士1人」や「1対1」の基準が多いようです。また具体的な基準を決めていない自治体も多く、全体の4割にのぼります。
参考:みずほ情報総研株式会社|保育所における障害児保育に関する研究報告書
なお、加配制度は公立や私立問わず、保育園や幼稚園などさまざまな保育施設で利用可能ですが、実際には人員の確保や予算が必要なことから、小規模な園では難しいなど制度の利用が限定的になる可能性もあります。
加配でどんな支援を受けられる?
加配保育士から受けられる支援は、対象の子供によって異なりますが、以下のような場合が多いでしょう。
食事やトイレなどのサポート
スプーンやフォークをうまく使えない場合には食事のサポート、自立した排せつが難しい場合はトイレのサポートなど、基本的な生活の動作の支援です。
集団生活のサポート
友だちとトラブルになりやすい、集団で行動することが苦手などの場合は集団生活のサポートをしてもらえます。子供の特性に合わせ、「1日の見通しを持ちやすいようあらかじめスケジュールを丁寧に伝える」「他の子供とのコミュニケーションで橋渡し役となる」などです。
保護者に対する支援も
園でどのような生活を送っているかをふまえ、保護者に対して客観的なアドバイスをしたり、悩みに寄り添ったりすることも加配保育士が行う支援の1つです。保護者にとっては加配保育士から園での様子をしっかり伝えてもらうことで安心でき、家庭での生活にも役立てられることもあるでしょう。
なお、これらはあくまでも例です。実際には子供の特性や環境によって必要な支援は異なります。また園によっても可能な対応は異なりますので、加配制度を利用する場合はあらかじめ加配保育士の役割や責任の範囲について確認しておくことが大切です。
加配をつけてもらうメリット・デメリット
保育園や幼稚園で加配をつけるにはメリットやデメリットがあります。
加配をつけてもらうメリット
メリットのひとつは先に紹介したような細やかなサポートが受けられることです。加配の先生とは密な時間を過ごすので、特性をよく理解してもらえます。苦手なことやできないことを認識したうえで必要な対処をしていくので、徐々にそれらを克服していくということも少なくありません。
加配をつけてもらうデメリット
加配をつけてもらうことにはデメリットもあります。
まず、加配保育士をつけるために新たに雇用するなど、園は人材を確保する必要があります。そのため対象の子供が転園や対園をした場合、人員やその確保にかかった費用が無駄になりかねません。そのため園によっては退園や転園を認めないことも。
また加配保育士と相性が悪かったとしても、すぐには変えられないことが多いでしょう。少なくとも1年間はそのままということもあります。その点はあらかじめ認識しておきましょう。
加配申請の手順
保育園や幼稚園で加配制度を利用する手続き(加配申請)は、自治体や園によって手順が異なりますが、ここでは一般的な例を紹介します。
まず、園に対して発達の特性や困り感、障害の有無など加配が必要な理由を具体的に伝えましょう。発達検査や他の機関で支援を受けたことがある場合は、その結果や支援の記録なども提示するとスムーズです。
次に必要に応じて、医師の診断書や意見書を準備しましょう。これらは準備に時間がかかることも多いので早めに動きはじめることが大切です。
そして加配申請書など必要書類に記入します。自治体と直接やり取りするのではなく、園を通じて手続きすることが一般的。書類の書き方など、分からないことはその都度確認し、準備しましょう。申請後は自治体の審査があり、加配の可否が決定します。もちろん審査結果によっては加配申請が通らないことも。審査には数週間から数カ月かかることもあります。
なお、入園時や新年度から加配制度を利用したい場合、加配申請に期限が設けられている場合もあるので事前に確認しておくと安心です。
加配など広島市の取り組み
最後に、加配を含めた広島市の取り組みを紹介します。
加配保育士の配置
広島市には加配保育士の配置制度があります。基本的には手帳(療育手帳・身体障害者手帳)を持っている場合に対象となりますが、持っていなくても必要に応じて対応してもらえる場合もあるため、園や後ほど紹介する区の児童福祉係などに相談してみましょう。
特別な支援員の配置
保育園や認定こども園において発達障害児支援のリーダーを担う保育士として、支援方法や環境の整備方法、保護者支援などを学んだ「発達支援コーディネーター」が配置されています。
また市立幼稚園では発達障害や肢体不自由などにより特別なサポートが求められる場合、必要に応じて介助や支援を行う「学習サポーター」や「特別支援教育アシスタント」が配置されます。
参考:広島市|発達障害のある方と家族のための広島市リソースブック 令和5年度版
区ごとの連絡先一覧
各区役所福祉課児童福祉係の連絡先は以下から確認してください。気になることがあったらまずは問い合わせしてみましょう。
必要に合わせて加配の利用を検討しよう
保育園や幼稚園における加配保育士について、基本の情報や申請手順などを紹介しました。加配制度は利用までに時間がかかることが多いので、早めに検討してみることが大切です。まずは情報収集や相談をして動き出してみるのがおすすめですよ。
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担当ライター